ハチ日記。

すぐ忘れてしまうので、見た、読んだ、行った、ことを備忘録として。

ひとり情シス

日本がIT後進国と揶揄される原因がこの一冊につまっている(さすがに言い過ぎか)

ひとり情シス

ひとり情シス

  • 作者:博, 清水
  • 発売日: 2018/07/27
  • メディア: 単行本
 

社内のIT管理を専業とする「情報システム部門」において、たった一人の部員で会社のありとあらゆるIT業務に対応している通称「ひとり情シス」の実態を解説した一冊。

 

情報システム部門の役割は社員のパソコン支給、業務アプリの導入、ネットワーク設備の管理などなど、ITに関連する全業務の保守・運用が対象となる。昨今のリモートワークの普及や、それに付随するセキュリティ脅威への対応など、情報システム部門が管理しなければならない業務は増えているにもかかわらず、経営者(ITに疎い)や、会社的に予算を回せないなどの問題から、部員拡充ができずに一人で対応している人たちのことを、いつからか「ひとり情シス」と揶揄されるようになった。

 

しかし、これは一部の会社のニッチな話ではなく、多くの企業で同様に一人または社員数に対して明らかに足りていない少人数で対応している情報システム部門がたくさん存在している事が本書にて明らかにされている。

 

本書はデル株式会社が行った情報システム部門の実態調査アンケートに基づいて執筆されており、「ひとり情シス」が抱えている問題点や環境、「ひとり情シス」が生まれた背景・経緯、そして現役の「ひとり情シス」担当による座談会(本音トーク)がまとめられている。様々な企業の実態が網羅・分析されている事から、自身の所属企業と他社との違い、または類似項を客観的に知る事ができる。

 

とは言え、「ひとり情シス」の問題は企業ごとに千差万別で、誰にでも当てはまる万能薬のような解決策がない事も問題の難しさとしてある。本書でも一般的な対策の提示(ユーザ部門のITリテラシーの強化、日々のコミュニケーション、経営層との意思疎通など)に留まっている。仕方がない事とは理解しつつも、もう少し著者の突っ込んだ意見を聞きたかったという気持ちが残るのも否めない。

 

あと、これは個人的感想だが、文章がどことなく読みづらい感があった。レポート的なまとめ方からか、単発の事実紹介が繰り返されている事で、何の話題をしているのかが時折分からなくなる事があった。(人の指摘ができるような文章能力はありませんが、参考意見程度として・・・)

 

ITが普及すれば仕事が楽になるはずなのに、逆にITに忙殺されてしまうという皮肉な現状がなんとも悲しい。本書は情報システム部員向けに描かれてはいるが、ユーザ部門や経営者の方にも読んでいただき、双方の立場を理解する一つの足がかりになればと思う。