ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序
今更ながらにエヴァ新劇場版を視聴開始。
エヴァを初めてテレビシリーズを観た時、「描写が妙にリアルで不気味」「ストーリーがよく分からない」 「今までに無い世界観で付いていけない」といった感じで、何をどう捉えたらイイのか分からない不思議さが勝っていた。何を訴えかけている作品で、結局最後はどうなったのかも理解できないまま、とりあえず観ただけという感想が近いかもしれない。
そんな状態だったので、新劇場版として再構成された作品の公開が始まった際はあまり食指が動かず放置していたが、この度、作品が完結したとの事で、それじゃぁ、あらためて観てみましょうかと視聴を開始した次第である。
新劇場版の第一作目「序」は、テレビシリーズ前半部分の総集編的な内容で、長らく離れていた自分には復習の意味で、こういう世界観・話だったなと思い返す導入作品としては丁度良かった。
内容の評価や考察はいろいろな人が語っているのであらためて語るまでも無いが、久しぶりに作品に触れて驚いたのは「世界観」の構築が細部まで行き届いている変態性だと思う。使徒の誕生や人類が戦う意味の設定が細かく決められている点は言うまでも無いが、その世界観で営まれる日常生活も細部まで手を抜かず描かれており、庵野秀明という男の変態性をあらためて感じさせられた。
続編の「破」「Q」そして、完結編はテレビシリーズとは異なるアナザーストーリー(異なる世界線?)と聞いているので、引き続き視聴していきたいと思う。
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
多くの人が一度はタイトルを耳にした事がある有名小説を今更ながら拝読。
友人の代理で野球部のマネージャーになった主人公が、マネージャーの仕事を理解するために「世界で一番売れているマネジメントの本」という謳い文句だけで内容も確認せずドラッカーの『マネジメント』を購入するところから始まる。そして、『マネジメント』は難しい組織経営に関する内容ではあるが、「野球部も一つの組織集団」と捉えて当てはめ・実践する事で、組織改善・効率化・満足度向上を図り、野球部を強くして甲子園を目指す話になっている。
本書は「小説(ストーリ ー)」と「『マネジメント』の解説」の2要素が大きな軸となっている。
まず「小説(ストーリー)」については、弱小野球部が『マネジメント』の教えによってどんどん強くなり、強豪校にも勝てるようになる!・・・という、言葉を選ばなければ「ご都合主義」で「読んだ事ありそうな安いストーリー」といった印象。(エンターテインメントとして考えれば、分かりやすくて読みやすい内容ではあるが)
一方、「『マネジメント』の解説」については、難しい経営学に関する内容を「野球部」という身近な存在に当てはめた事でイメージを付けやすくなっており、また、小説(ストーリー)として一連の流れで話が展開される事で『マネジメント』の教えを「点」ではなく「線」で理解できる構成が素晴らしかった。
『マネジメント』原書から引用された内容は本当に一握りだと思うが、「マネジメントとは?」を理解する入り口として、本書は大人から子供まで幅広い層をカバーする良き入門書である。
ひとり情シス
日本がIT後進国と揶揄される原因がこの一冊につまっている(さすがに言い過ぎか)
社内のIT管理を専業とする「情報システム部門」において、たった一人の部員で会社のありとあらゆるIT業務に対応している通称「ひとり情シス」の実態を解説した一冊。
情報システム部門の役割は社員のパソコン支給、業務アプリの導入、ネットワーク設備の管理などなど、ITに関連する全業務の保守・運用が対象となる。昨今のリモートワークの普及や、それに付随するセキュリティ脅威への対応など、情報システム部門が管理しなければならない業務は増えているにもかかわらず、経営者(ITに疎い)や、会社的に予算を回せないなどの問題から、部員拡充ができずに一人で対応している人たちのことを、いつからか「ひとり情シス」と揶揄されるようになった。
しかし、これは一部の会社のニッチな話ではなく、多くの企業で同様に一人または社員数に対して明らかに足りていない少人数で対応している情報システム部門がたくさん存在している事が本書にて明らかにされている。
本書はデル株式会社が行った情報システム部門の実態調査アンケートに基づいて執筆されており、「ひとり情シス」が抱えている問題点や環境、「ひとり情シス」が生まれた背景・経緯、そして現役の「ひとり情シス」担当による座談会(本音トーク)がまとめられている。様々な企業の実態が網羅・分析されている事から、自身の所属企業と他社との違い、または類似項を客観的に知る事ができる。
とは言え、「ひとり情シス」の問題は企業ごとに千差万別で、誰にでも当てはまる万能薬のような解決策がない事も問題の難しさとしてある。本書でも一般的な対策の提示(ユーザ部門のITリテラシーの強化、日々のコミュニケーション、経営層との意思疎通など)に留まっている。仕方がない事とは理解しつつも、もう少し著者の突っ込んだ意見を聞きたかったという気持ちが残るのも否めない。
あと、これは個人的感想だが、文章がどことなく読みづらい感があった。レポート的なまとめ方からか、単発の事実紹介が繰り返されている事で、何の話題をしているのかが時折分からなくなる事があった。(人の指摘ができるような文章能力はありませんが、参考意見程度として・・・)
ITが普及すれば仕事が楽になるはずなのに、逆にITに忙殺されてしまうという皮肉な現状がなんとも悲しい。本書は情報システム部員向けに描かれてはいるが、ユーザ部門や経営者の方にも読んでいただき、双方の立場を理解する一つの足がかりになればと思う。
推しが武道館いってくれたら死ぬ
イベントでたまたま出会った地下アイドル(舞菜)に一目惚れした主人公(えりぴよ・女性)が、人生のすべてを推しに捧げる(バイト代をすべてドルオタ活動につぎ込む)様を描いた作品。
キービジュアルを見たときは正統派アイドルものかと思ったが、観賞してみるとそれだけに留まらず、オタク側の推しに対する思いの強さを前面に表現した、楽しくて・きもい(ほめ言葉)作品となっていた。
「推しが武道館に〜」は、現実的には武道館にいけるような人気グループではないが、それでも推しメンが武道館で歌って踊る姿を見たいというオタク側の希望を端的に表現した良い作品名であると思う。
登場するオタキャラは個性的で、主人公のえりぴよは怪我をしてバイドできない時は親に土下座してお金を借りようとするし、古参オタのくまささんは休みが取れないとライブに行けないからという理由で会社をやめているし、新参オタの基(もとい)さんは妹に雰囲気が似ているメンバーを推している・・・など、これだけ読めばクズの集まりにか見えないが、推しメンに対する愛情の熱さだけは見ていて清々しいものがある。
あと、EDが松浦亜弥の「桃色の片思い」のカバーであるのも面白い。アイドルであるあややの楽曲を用いて、オタクが推しメンを一方的に応援する様を片思いと重ねている点も洒落が効いている。
全体として「純粋なアイドル活動」と「個性的なオタク達」が上手く掛け合わさり、「ただ可愛い」だけの作品にはならず気楽に楽しく見れる作品となっている。おすすめです。
響け!ユーフォニアム
テレビシリーズでこのクオリティ。おそろしい時代です。
同名小説を原作として作られたアニメーション作品で、高校の吹奏楽部に所属する主人公たちを中心に、コンクールで金賞を取るために練習に励む姿が描かれている。
原作小説の作者自身も学生時代は吹奏楽部に所属していたという事もあり、吹奏楽の楽しさはもとより、コンクールの厳しさや部内での人間関係など、エンターテイメントだけに収まらないリアリティを持った作品となっている。
アニメーション制作は神作画に定評のある「京都アニメーション」が担当。全体的にクオリティが高い事はもちろんながら、演奏シーンの描写は圧巻としか言いようがない!緻密な取材をもとに楽器を細部まで表現しており、演奏に合わせた指の動きまで描いている。コンクールでの演奏シーンは、自分がその場所にいるかと錯覚させるかのごとく、繊細かつダイナミックな表現がなされている。
たくさんありすぎて選ぶのが難しいが、この作品の一押しポイントを上げるならば「感情」を表す、いや爆発させるシーンの数々を推したい。上手く演奏できなかったり、人間関係で悩んだり、思い通りの結果にならず悔しくて「涙」するシーンがしばしば描かれているが、その人物ごとの思いや涙にいたった状況が丁寧に描かれ、そこに声優さんの熱のこもった演技が加わる事で、見ている側も自然と涙させられてしまう、そんな心揺さぶられる作品となっている。
「感情」以外の部分も見所は多く、日常会話の掛け合いなど楽しく見れる部分もあり、見終わったあとの読後感はとても爽やかで晴れやかな気持ちになれる。
当作品はテレビシリーズの2期、および劇場版とシリーズが続いており、時期は未定だがテレビシリーズの3期制作も発表されているので、長く楽しめるおすすめの1作である。ぜひ!!
魔女の旅々
魔女は万能だが万能では無い!
史上最年少の15歳という若さで魔法使い最高位「魔女」となった主人公イレイナが、世界中を旅しながら出会った人たちとの交流を描いた作品。
前情報一切無く、キービジュアルの世界観(美しい作画と可愛い主人公)だけで視聴開始。主人公の万能感は「なろう系小説」のようなご都合主義にも見えるが、逆に「魔女」という存在の特別感を際立たせる面も持ち合わせている。さらに「万能」ではあるが「何でも出来るわけでは無い」という限界もうまく演出されている点がよかった。
基本的には1話完結の構成だが、各話で登場した人物や出来事が後々登場する事もあり、そう知った意味ではストーリー物といった楽しみみ方も出来る。(特に劇中に登場する小説「ニケの冒険譚」が各話を繋ぐキーアイテムとして活躍する)
原作小説もそれなりの巻数が発刊されており、1期最終話にも新たな物語の始まりを示唆するキャラクターが登場している事から、近い将来に2期制作が期待される作品である。